Anti-aging and beautiful skin
アンチエイジング・美肌
目の加齢予防に赤色光は役立つ?670nmを毎朝2分・1年間使った42人の研究|加齢黄斑変性(AMD)でも検証
赤い光を目に当てることで、年齢とともに低下する目の働きは変わるのでしょうか。少し意外に聞こえますが、赤色光や近赤外光を使うフォトバイオモジュレーション(PBM)は、目の老化や加齢黄斑変性についても研究されています。
今回紹介するのは、670nmの赤色光を毎朝2分、12カ月間使った42人のパイロット研究です。参加したのは、網膜に大きな異常がない高齢者と、中等度の加齢黄斑変性(AMD)がある人たちでした。
研究者が調べたのは、一般的な視力だけではありません。暗い場所で光を感じる力や、まぶしい光を見たあとに暗さへ目が慣れるまでの時間、さらに網膜の構造まで、1年間かけて細かく追っています。
結果は少し意外なものでした。中等度の加齢黄斑変性(AMD)の人では、670nmの赤色光による明確な改善は確認されませんでした。一方、AMDのない高齢者では、暗い場所で働く視覚機能の一部に改善方向の変化が見られています。
ただし、その変化を「赤色光の効果」と断定するには、大切な注意点があります。どんな実験だったのか、何が変わり、何が変わらなかったのか。数字を見ながら順番に確認していきましょう。
目の「加齢による変化」に赤色光は影響する?42人で調べた研究
この研究は2020年に『Journal of Clinical Medicine』に掲載されました。対象となったのは55歳以上の42人です。
参加者には、網膜に加齢黄斑変性(AMD)が見られない人と、中等度AMDがある人が含まれていました。加齢黄斑変性とは、ものを見るうえで重要な網膜の中心部「黄斑」に、加齢とともに変化が起きる病気です。
さらにAMDの人は、「SDD」と呼ばれる網膜の沈着物があるかどうかでも分けられました。論文では、SDDがある目は暗い場所で働く視覚機能の低下がより強く、病気の進行とも関係する特徴として扱われています。
42人が参加し、35人が12カ月まで完了
論文本文では、研究開始時に42人が参加したとされています。そのうち5人が検査の負担が大きいことを理由に研究参加を取りやめ、2人が新生血管型AMDへ進行したため、その後の光の使用と解析から除外されました。
最終的に35人が12カ月の研究を完了しています。
なお、論文の抄録には「中等度AMD31人、正常網膜11人」と記載されていますが、結果本文では研究開始時を「AMDのない人12人、中等度AMD30人」としています。論文内で初期人数の記載に1人ずつずれがあるため、この記事では最終結果について詳細な結果本文と表の人数を使用します。
| グループ | 12カ月まで完了した人数 | 平均年齢 |
| AMDのない高齢者 | 12人 | 69.9歳 |
| 中等度AMD・SDDなし | 15人 | 69.4歳 |
| 中等度AMD・SDDあり | 8人 | 69.3歳 |
毎朝たった2分。ただし、それを1年間続けた

研究で使われたのは、懐中電灯のような小型の手持ち式装置です。論文では「670nmの光」と表現されていますが、実際の装置から出る光は650〜700nmの範囲の赤色光でした。
装置の先端には9個のLEDがあり、光が拡散するようにカバーが付けられています。参加者は研究対象となった片方の目の前に装置を置き、毎朝2分間、赤色光を見ました。
| 項目 | 研究条件 |
| 使用した光 | 670nmとして使用された赤色光(装置の範囲は650〜700nm) |
| 光の強さ | 40mW/cm² |
| 1回の光の量 | 4.8J/cm² |
| 1回の使用時間 | 2分(120秒) |
| 頻度 | 毎朝1回 |
| 使用期間 | 12カ月 |
| 使用する場所 | 研究対象となった片方の目 |
| 方法 | 装置を目の前に置き、赤色光を見る |
特徴的なのは、週に数回ではなく、毎朝の使用を12カ月間続けたことです。参加者の85%は、「毎朝ほぼ同じ時間に使用し、1カ月に休んだ日は5日未満だった」と回答しており、研究者は使用状況は良好だったとしています。
普通の視力だけでは分からない。「暗い場所での見え方」まで詳しく調べた
「赤色光を使ったあと、視力表がどこまで読めるようになったかを調べた研究なの?」と思うかもしれません。今回の研究は、それだけではありません。
研究者が特に注目したのは、暗い場所で働く「杆体」という視覚の仕組みです。論文では、年齢とともに網膜が変化するとき、明るい場所や色を見る働きを担う細胞より、暗い場所を見る細胞のほうが影響を受けやすいことが背景として説明されています。
参加者は研究開始前に加えて、1カ月、3カ月、6カ月、12カ月の時点で検査を受けました。
| 調べたこと | 一般的な意味 |
| 通常の視力 | 眼鏡などで最大限補正した状態でどこまで見えるか |
| 暗い条件での視力 | 明るさを落としたときにどこまで見えるか |
| 暗い場所で光を感じる力 | 暗所でどの程度弱い光を感じられるか |
| 暗さに目が慣れるまでの時間 | 強い光を見たあと、暗い場所を見る機能が戻るまで何分かかるか |
| 網膜の電気的な反応 | 光に対する視覚細胞の反応 |
| 網膜の構造 | OCTなどで網膜の厚さや構造を調べる |
特に重要な評価項目とされたのが、強い光を見たあと、暗い場所を見る力が戻るまでの時間です。論文では「rod-intercept time(RIT)」と呼ばれていますが、ここでは「暗さに目が慣れるまでの回復時間」と考えると分かりやすいでしょう。時間が短くなるほど、暗い環境への回復が速くなったことを意味します。
1年後、中等度の加齢黄斑変性(AMD)では明確な改善が見られなかった
まず、研究の中心となった中等度AMDの人たちから見てみましょう。
結論から言うと、中等度AMDでは、670nmの赤色光を1年間毎朝使用しても、目の機能や網膜の構造に明確な改善は確認されませんでした。SDDがないAMDでも、SDDがあるAMDでも同様です。
普通の視力はほぼ変わらなかった
眼鏡などで最大限補正した状態の視力を、文字を何個読めたかで評価した結果は次のとおりです。
AMDの2グループで数字はわずかに上がっていますが、研究者は赤色光によって視力が改善したとは判断していません。この程度の違いは、検査を繰り返したときのばらつきでも説明できるとしています。
つまり、この研究から「670nmの赤色光で通常の視力が良くなった」とは言えません。
| グループ | 研究開始前 | 12カ月後 |
| AMDのない高齢者 | 87.1文字 | 85.7文字 |
| 中等度AMD・SDDなし | 84.8文字 | 85.7文字 |
| 中等度AMD・SDDあり | 81.6文字 | 83.0文字 |
暗さに慣る時間も、AMDではほとんど変わらなかった
さらに重要なのが、暗い場所への回復時間です。同じ参加者で研究開始前と12カ月後を比較できたデータでは、次のようになりました。
AMDのない高齢者では平均で3.76分短くなりました。一方、中等度AMDの人では変化が小さく、研究者は明確な改善を確認できなかったとしています。
ここから読み取れる大きなポイントは、すでに中等度AMDまで進行した目では、今回の条件の670nm赤色光による明確な変化が見つからなかったということです。
| グループ | 研究開始前 | 12カ月後 | 変化 |
| AMDのない高齢者※7人 | 9.35分 | 5.59分 | −3.76分 |
| 中等度AMD・SDDなし※8人 | 14.92分 | 13.24分 | −1.68分 |
| 中等度AMD・SDDあり※5人 | 20.00分 | 19.21分 | −0.79分 |
ではAMDのない高齢者では?暗い場所を見る機能の一部が改善方向へ
一方、AMDのない高齢者では、少し違う結果が出ました。
暗い場所で弱い光をどの程度感じられるかを示す数値は、56.18dBから57.96dBへ変化し、平均1.77dB上昇しました。
| グループ | 研究開始前 | 12カ月後 | 変化 |
| AMDのない高齢者 | 56.18dB | 57.96dB | +1.77dB |
| 中等度AMD・SDDなし | 54.69dB | 55.58dB | +0.89dB |
| 中等度AMD・SDDあり | 54.92dB | 53.93dB | −0.99dB |
この検査では、数字が高いほど、暗い環境で弱い光を感じやすい方向を示します。つまり、AMDのない12人では、暗い場所での感度を示す数値が改善方向へ動いたことになります。
さらに、暗さへの回復時間も、研究開始前と12カ月後の検査を正確に完了できた7人では平均9.35分から5.59分へ短縮しました。「年齢とともに低下する暗い場所での見え方に、赤色光が何か影響したのでは?」と気になる結果です。
ただし、この結果には重要な注意点があります。
「1.77dB改善」は本当に赤色光のおかげ?研究者も慎重でした
暗所での感度が上がった1.77dBという変化は、それほど大きな数字ではありません。
研究チームが同じ検査装置で別に調べていた未発表データでは、同じ人が検査を繰り返しただけでも平均で2.16〜2.42dB程度の違いが出ることがあったとされています。つまり、今回確認された+1.77dBという変化は、検査そのもののばらつきでも説明できる可能性があるのです。
暗さへの回復時間が短くなった結果についても、研究者は慎重です。研究開始前と12カ月後を直接比較できたAMDのない参加者は7人だけでした。
そのため論文では、2つの暗所視機能の検査がどちらも良い方向へ動いたことには注目しつつ、今後はよりしっかりした比較試験で確かめる必要があるとしています。
ここは、この研究を読むうえでとても大切です。改善方向の数字が出たことと、「670nmの赤色光によって改善したことが確認された」ことは同じではありません。
網膜そのものは変わった?画像検査でもAMDへの明確なメリットはなし
「見え方だけでなく、目の中そのものに変化はあったのでしょうか」。研究ではOCTという画像検査などを使い、網膜の構造も詳しく調べています。
評価したのは、光を感じる細胞が存在する部分の厚さや、網膜色素上皮とその下の膜を合わせた構造などです。しかし12カ月後、670nmの赤色光によってAMDの網膜構造が良い方向に変化したとは判断されませんでした。
光を感じる細胞がある外側の網膜についても、保護するような変化は確認されていません。また、AMDの目に見られた一部の構造変化について、論文では赤色光の効果ではなく、病気が自然に進行した結果と考えられると説明しています。
つまり、「通常の視力では分からなかったけれど、画像を見ると網膜が改善していた」という結果でもありませんでした。
過去には良い結果もあったのに、なぜ今回は違った?
今回の論文として興味深いのが、それ以前に報告されていた研究と結果が一致しなかったことです。
論文内では、過去に780nmの光を使った研究や、590nm・670nm・790nmを組み合わせた研究で、加齢黄斑変性(AMD)の視覚機能や網膜の沈着物に改善方向の変化が報告されていたことが紹介されています。
ところが今回は、670nmの光を毎日使用しても、中等度AMDでは同じような結果は得られませんでした。研究者は、その理由としていくつかの可能性を挙げています。
一つは、使用した光の種類が違うことです。以前の研究では複数の波長を組み合わせたものもありました。もう一つは、光を使い始める時期です。すでに中等度AMDまで進んだ目では、変化する余地が小さかった可能性もあると考察されています。
さらに、光の量や使用時間が最適だったかも分かっていません。つまり今回の研究は、「赤色光はAMDに意味がない」とすべてを否定したものではなく、今回使用した670nm・40mW/cm²・1回2分・毎日という条件では、中等度AMDへの明確なメリットを確認できなかったという結果です。
そもそも、なぜ赤色光が「目の加齢」に関係すると考えられている?
ここからは、「今回直接確認されたこと」と「論文で紹介されている仕組み」を分けて考える必要があります。
論文では、年齢とともに細胞内の「ミトコンドリア」の働きが低下することが背景として紹介されています。ミトコンドリアは、細胞が活動するときに使うエネルギーをつくる場所です。
網膜は非常に多くのエネルギーを必要とするため、ミトコンドリアの働きが低下すると影響を受けやすい可能性がある、と論文では説明されています。
赤色光が細胞のエネルギーづくりに関わる可能性
過去の研究からは、赤色光から近赤外光の一部が、ミトコンドリア内の「シトクロムcオキシダーゼ」と呼ばれる仕組みに作用する可能性が考えられています。その結果、ミトコンドリアの働きや、細胞が活動するときに使うエネルギー「ATP」の産生に影響する可能性がある、という考え方です。
ただし、今回の42人の研究で、参加者の網膜からATPを測ったわけではありません。ミトコンドリアの働きを直接調べたわけでもありません。
今回直接測定したのは、視覚機能と網膜の構造です。そのため、「670nmの光でATPが増えた結果、目の機能が変わった」とまでは言えません。これはあくまで、論文内で過去研究をもとに説明されている「考えられている仕組み」です。
安全性は?光に関連した重大なトラブルは報告されなかった
1年間、毎日目に赤色光を使う研究となると、安全性も気になります。今回の研究では、装置に関連すると判断された重大な問題は報告されませんでした。
一方、中等度AMDの参加者2人が研究期間中に新生血管型AMDへ進行しています。2人には症状のない網膜下の液体が見つかり、その後の光の使用と研究解析から除外されました。
ただし論文は、この2人の進行を赤色光によるものとはしていません。もともとAMDは進行する可能性のある病気であり、今回の研究だけから赤色光との因果関係を示すことはできません。
また、途中で研究をやめた5人についても、光による好ましくない反応が理由ではなく、研究時の検査項目が多く、通院時の負担が大きかったことが理由とされています。
1年間続けた研究。でも「やめた後どうなるか」は分からない
今回の研究期間は12カ月です。赤色光を使用しながら1年間の変化を追っている点は、この研究の特徴の一つです。
ただし、参加者は12カ月の間、継続して毎朝光を使用しています。つまり分かるのは「1年間使用したときにどうなったか」であり、使用をやめたあとも変化が続くかは調べていません。
半年後や1年後まで変化が残るかを調べた「使用終了後の長期追跡研究」ではないことは、区別して考える必要があります。
家庭用の赤色光機器にも同じことが言える?
今回使われた装置自体は小型の手持ち式でした。そのため、「家庭で使う赤色LEDにも当てはめられそう」と感じるかもしれません。
しかし、この結果を市販されている別の機器へそのまま広げることはできません。今回の研究条件は、650〜700nmの赤色光、40mW/cm²、4.8J/cm²、1回120秒、毎朝、12カ月でした。
別の機器では、光の種類、強さ、光の量、使用時間などが異なる可能性があります。さらに今回の論文では、12カ月の途中で装置の光出力が変化していなかったかを確認する仕組みがなかったことも研究の限界として挙げています。
研究者自身も、今回使った光の量が人のAMDに最適だったかどうかは分からないとしています。したがって、この論文から「670nmの家庭用機器なら同じ結果になる」「毎日2分使えばよい」と考えることはできません。
結果を見るときに知っておきたい研究の限界
今回の研究から何かを判断するとき、最も大きな注意点があります。光を使わなかった比較グループがないことです。
AMDのない人も、AMDのある人も、研究対象となった目にはすべて670nmの赤色光を使用しました。そのため、AMDのない高齢者で暗さへの回復時間が短くなったとしても、「赤色光を使わなかった同年代の人ではどうだったのか」を比べることができません。
また、研究開始時は42人で、12カ月を完了したのは35人です。さらに暗さへの回復時間を正確に測定できた人数はもっと少なく、研究開始前と12カ月後を直接比較したデータでは、AMDのない人が7人、中等度AMD・SDDなしが8人、中等度AMD・SDDありが5人でした。特に「AMDのない高齢者では暗さへの回復が速くなった」という結果は、少人数のデータであることを忘れないほうがよいでしょう。
AMDの状態にもばらつきがあります。研究者は、少人数のなかに比較的進行した目が多く含まれたことで、「改善する余地が小さい集団」になっていた可能性も挙げています。
さらに、装置の設定は40mW/cm²でしたが、1年間の研究期間中ずっと同じ光出力を維持していたかを確認する仕組みはありませんでした。
今回の研究は、将来のより大規模な試験につなげるためのパイロット研究です。「本物の光」と「効果のない偽の光」を無作為に割り当てた比較試験ではないため、AMDのない高齢者で見られた変化についても、670nmの赤色光によって起きたと断定する段階ではありません。
まとめ|目の加齢への可能性は見えたものの、まだ「効いた」とは言えない
今回の研究では、55歳以上の42人に対し、670nmとして扱われる赤色光を毎朝2分、12カ月間使用してもらいました。
中等度の加齢黄斑変性(AMD)の人では、通常の視力、暗所での視覚機能、網膜の構造などに、670nmの赤色光による明確な改善は確認されませんでした。
一方、AMDのない高齢者では、暗い場所で光を感じる感度が平均1.77dB上昇し、暗さへの回復時間は測定できた7人で平均9.35分から5.59分へ短縮しました。年齢とともに低下しやすい暗所での視覚機能に、改善方向の変化が2つの検査で見られた点は、この研究の興味深いところです。
ただし、1.77dBという変化は検査のばらつきでも説明できる可能性があり、暗さへの回復時間のデータも少人数です。さらに、赤色光を使わなかった比較グループがありません。
そのため、この研究から一番素直に読み取れるのは、「今回の条件の670nm赤色光は、中等度の加齢黄斑変性(AMD)には明確なメリットを示さなかった。一方、AMDのない高齢者では、加齢と関係する暗所視機能に今後さらに調べる価値のある変化が見つかった」というところまでです。
赤色光研究では、良い結果が出た論文だけでなく、「どの段階の人には変化が見られなかったのか」を知ることも重要です。目の加齢に対して赤色光が本当に役立つのか。今回の研究はその可能性を示す一方で、まだ答えを出すには比較試験が必要であることも教えてくれます。
参考文献
A Pilot Study Evaluating the Effects of 670 nm Photobiomodulation in Healthy Ageing and Age-Related Macular Degeneration
Manjot K. Grewal, Chrishne Sivapathasuntharam, Shruti Chandra, Sarega Gurudas, Victor Chong, Alan Bird, Glen Jeffery, Sobha Sivaprasad
2020年
Journal of Clinical Medicine, 9(4), 1001
DOI:10.3390/jcm9041001
専門用語のかんたん解説
PBM(フォトバイオモジュレーション)
赤色光や近赤外光などを使い、細胞や組織の働きに影響を与える方法です。
加齢黄斑変性(AMD)
ものを見るうえで重要な網膜の中心部「黄斑」に、加齢とともに変化が起きる病気です。
SDD
網膜の特定の場所に見られる沈着物です。今回の論文では、暗い場所で働く視覚機能の低下や病気の進行と関係する特徴として扱われています。
ATP
細胞が活動するときに使うエネルギーです。