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細胞再生・創傷治癒促進
傷の修復における赤色LEDとレーザーの共通点と違いとは?68研究のレビュー
赤い光を傷に当てることで、皮膚の修復を助けられるのでしょうか。
光を使ったケアというと、医療用のレーザーを思い浮かべる方もいるかもしれません。でも、身近な照明や美容機器にも使われているLEDの光にも、同じような働きがあるのでしょうか。
実は、LEDとレーザーが傷の修復に与える影響を、68件の研究から比較した論文があります。
2014年に医学誌『Anais Brasileiros de Dermatologia』に掲載されたレビュー論文です。細胞や動物を使った研究を分析し、2種類の光が傷の修復に関わる細胞や組織にどのような変化をもたらすのかを調べています。
その結果、LEDとレーザーのどちらでも、コラーゲンをつくる細胞の増加や新しい血管の形成など、傷の修復に関わる似た反応が報告されていました。
さらに、光を当てる量によって結果が変わるという興味深い報告もあります。
LEDとレーザーにはどんな共通点があり、何が違うのでしょうか。研究で使用された赤色光の種類や具体的な数値とともに、詳しく見ていきましょう。
レーザーとは違うLEDの光。その働きに研究者が注目
レーザーを使った傷の治療に関する研究には、長い歴史があります。
今回の論文によると、傷の治療にレーザーを利用した研究は1960年代から報告されています。一方、LEDを治療に利用する研究が報告されるようになったのは1990年代からです。
そもそも、レーザーとLEDにはどのような違いがあるのでしょうか。
大きな違いの一つは、光の出し方です。
レーザーには、光の波がそろっているという特徴があります。一方、LEDの光にはそのような性質がありません。
この違いから、レーザー特有の性質が細胞や組織への働きかけに重要なのではないか、という考え方もありました。
しかし、光の波がそろっていないLEDでも、レーザーと似た反応が起こるのであれば、光を使ったケアの可能性はさらに広がります。
そこで研究者たちは、過去の研究を集め、LEDとレーザーによる生物学的な反応の共通点と違いを調べました。
なお、LEDは光を出す装置の一種であり、必ずしも赤色光を出すわけではありません。今回のレビューでは赤色LEDの研究が多く含まれていますが、近赤外光や青色光、緑色光を使用した研究も取り上げています。
細胞と動物の実験68件を分析。LEDとレーザーの直接比較も
今回の論文は、新たに参加者を集めて実験したものではありません。
過去に発表された研究を集め、結果を比較・整理した「レビュー論文」です。
研究者たちはMedline、PubMed、SciELO、Science Directという論文データベースを使い、光による傷の修復に関係する研究を探しました。
論文では、1992〜2012年に英語またはポルトガル語で発表された研究を検索対象としたと説明しています。
分析されたのは合計68件で、次の3つに分けられています。
| 研究の種類 | 研究数 | 内訳 |
| レーザーを使った研究 | 48件 | 細胞の実験16件、動物の実験32件 |
| LEDを使った研究 | 14件 | 細胞の実験8件、動物の実験6件 |
| レーザーとLEDの両方を比較した研究 | 6件 | 細胞の実験2件、ラットの実験4件 |
| 合計 | 68件 | 細胞・動物を対象とした研究 |
ここでいう細胞の実験とは、培養した細胞に光を当て、その反応を調べるものです。
動物の実験では、ラットやマウスなどを使い、傷ついた皮膚の組織にどのような変化が起きるかを確認しています。
つまり、68という数字は実験に参加した人数ではなく、分析した研究の数です。
このレビューの特徴は、レーザーとLEDを別々に調べた研究だけでなく、両方を直接比較した6件の研究が含まれていることです。
光の出し方が異なる2種類の装置で、細胞や組織の反応に違いが生まれるのか。そこが今回の大きな注目点です。
LEDでも、傷の修復に関わる5つの変化が報告されていた
では、LEDやレーザーの光を当てると、細胞や組織にはどのような変化が起きていたのでしょうか。
今回のレビューでは、主に次の5つの反応が報告されています。
| 確認された変化 | 傷の修復との関係 |
| 炎症に関わる細胞の減少 | 傷の炎症に関係する細胞が少なくなる変化 |
| コラーゲンをつくる細胞の増加 | 傷ついた組織を修復するために働く細胞が増える変化 |
| コラーゲンの合成の増加 | 皮膚などの組織を支える成分をつくる働きが高まる変化 |
| 新しい血管ができる働きの促進 | 修復中の組織へ酸素や栄養を届ける血管がつくられる過程への影響 |
| 肉芽組織の形成 | 傷を埋めていく新しい組織がつくられる変化 |
これらは、傷が修復されていく過程に関わる重要な反応です。
例えば、皮膚に傷ができると、傷ついた部分を修復するために新しい組織がつくられていきます。その過程では、コラーゲンをつくる細胞や、新しい血管の形成などが関わっています。
今回のレビューでは、レーザーを使った研究だけでなく、LEDを使った研究でも、このような変化が報告されていました。
特に興味深いのは、光の性質が異なる2種類の装置で、傷の修復に関わる共通した反応が見られたことです。
LEDがレーザーと同じように細胞や組織へ働きかける可能性を示す結果といえます。
なお、5つの変化はレビュー全体で報告されたものであり、すべての実験で5項目すべてが確認されたという意味ではありません。
LEDとレーザーを直接比べた6研究でも、似た反応が見られた
別々の研究で似た結果が出ていたとしても、LEDとレーザーが本当に同じように働くのかは気になるところです。
そこで注目したいのが、両方の光を直接比較した6件の研究です。
そのうち2件は培養した細胞を使った実験、4件はラットを使った実験でした。
比較研究では、460〜950nmの幅広い波長が使われています。特に多かったのは630〜790nmの範囲で、赤色光を中心とした比較が行われていました。

660nmのレーザーと635nmのLEDを比較した研究
例えば、2007年に発表されたCorazzaらの研究では、ラットの皮膚の傷を対象に、レーザーとLEDを比較しています。
どちらも赤色光の範囲ですが、光の出し方だけでなく、使用した波長や光の量も異なります。
この研究は、LEDとレーザーの両方で生物学的な反応が見られた研究として、レビューに紹介されています。
また、別のVolpatoらの研究では、培養した細胞を使い、660nmや780nmのレーザーと637nmのLEDを比較しています。
こちらも、両方の光で生物学的な反応が見られた研究として取り上げられています。
| 比較項目 | レーザー | LED |
| 使用した波長 | 660nm | 635nm |
| 与えた光の量 | 5J/cm² | 20J/cm² |
| 調べた内容 | 新しい血管ができる働き | 新しい血管ができる働き |
光の波がそろっていなくても、細胞は反応する可能性
レビューの著者たちは、6件の比較研究について、LEDとレーザーで似た生物学的な反応が報告されていたとまとめています。
これまで、レーザー特有の「光の波がそろっている」という性質が、細胞への働きかけに重要なのではないかという考え方がありました。
しかし、今回紹介された研究では、その性質を持たないLEDでも、コラーゲンをつくる細胞の増加や新しい血管の形成といった反応が見られています。
つまり、細胞や組織に光が働きかけるために、必ずしもレーザー特有の性質が必要とは限らないということです。
これは、LEDを傷の修復に活用する研究を進めるうえで、重要な手がかりとなります。
ただし、比較研究では光の波長や量が必ずしも同じではありません。そのため、同じ条件で使った場合にLEDとレーザーの働きが完全に等しいと結論づけたものではありません。
LED研究の中心は627〜670nm。赤色光が多く使われていた
ここで、研究に使われた光の種類をもう少し詳しく見てみましょう。
今回のレビューでは、LEDのみを使った14件の研究と、レーザーのみを使った48件の研究について、使用された波長や光の量を整理しています。
| 比較項目 | レーザー研究 | LED研究 |
| 研究数 | 48件 | 14件 |
| 使用された波長の全体範囲 | 532〜1064nm | 456〜880nm |
| よく使われた波長帯 | 632.8〜830nm | 627〜670nm |
| 使用された光の量 | 0.09〜90J/cm² | 0.1〜10J/cm² |
| よく使われた光の量 | 1〜5J/cm² | 4J/cm² |
ここでいう「nm(ナノメートル)」は、光の種類を表す数字です。
赤色光と近赤外光は波長が異なります。赤色光は目に見える赤い光ですが、近赤外光は人の目にはほとんど見えません。
LED研究で特に多く使われていたのは、627〜670nmという赤色光の範囲でした。
例えば、LED研究には次のような条件が掲載されています。
| 研究 | 対象 | LEDの波長 | 光の量 |
| Huangら | 培養細胞 | 630nm | 1・2J/cm² |
| Lanzafameら | マウス | 670nm | 5J/cm² |
| Agnolら | ラット | 640nm | 6J/cm² |
| Tadaら | 培養細胞 | 627nm | 1・2・4・8・10J/cm² |
| Komineら | 培養細胞 | 627nm | 4J/cm² |
これらは、実際にレビューの中で紹介されている赤色LEDの研究例です。
一方、レーザー研究では632.8〜830nmがよく使われており、赤色光から近赤外光にかけて、より幅広い波長が中心となっていました。
興味深いのは、LEDとレーザーで光をつくる仕組みは異なっていても、研究で多く使われている波長帯には重なりがあることです。
このことからも、レーザーかLEDかという装置の違いだけではなく、どの種類の光を使うかが重要であることがわかります。
光を多く当てるほどよいわけではなかった
光を使ったケアでは、強い光をたくさん当てたほうが、より大きな変化が起きそうに感じるかもしれません。
しかし、今回のレビューでは、必ずしもそうではないことを示す研究も紹介されています。
レーザーを使ったラットの研究では、670nmの赤色光を使用し、4J/cm²と8J/cm²の条件が比較されました。
その結果、4J/cm²のほうが8J/cm²より良好な反応を示したと報告されています。
この「J/cm²」という数字は、一定の面積にどれだけの光エネルギーを与えたかを表しています。
4J/cm²と8J/cm²では、同じ面積に与える光エネルギーの量が2倍違います。
それにもかかわらず、光の量が少ないほうで良好な結果が得られたのです。
さらに、別の細胞実験では、10J/cm²や16J/cm²といった条件で、細胞の働きが抑えられる方向の反応も報告されています。
このような結果から、光が細胞に与える影響は、単純に光の量を増やすほど大きくなるわけではないと考えられます。
論文でも、光の種類や与える量、さらに光を受ける組織の状態などによって、細胞の反応が変わることが説明されています。
つまり、傷の修復に光を利用する場合には、どの光を使うかだけでなく、どのくらいの量を当てるかも重要ということです。
なお、今回の結果は4J/cm²があらゆる条件で最適だと示したものではありません。研究対象や波長によって適切な条件は変わると考えられています。
68研究のうち59件で赤色光・近赤外光の範囲が使われていた
今回のレビューには、もう一つ特徴的な数字があります。
68件の研究のうち、59件では、赤色光や近赤外光が組織の内部まで比較的届きやすいとされる波長帯の光が使われていました。
全体のおよそ87%です。
一方、残る9件では青色光や緑色光の範囲が使われていました。
| 光の範囲 | 研究数 |
| 赤色光・近赤外光が中心となる波長帯 | 59件(約87%) |
| 青色光・緑色光の範囲 | 9件(約13%) |
| 合計 | 68件 |
なぜ、赤色光や近赤外光を使った研究が多かったのでしょうか。
論文では、光が組織の中に届く性質との関係が説明されています。
光は、波長によって皮膚や組織への届き方が異なります。
例えば、600nmより短い光は、皮膚のメラニンや血液中のヘモグロビンなどに強く吸収されるとされています。
一方、赤色光や近赤外光には、比較的組織の内部まで届きやすい波長帯があります。
そのため、傷の修復に関する研究でも、赤色光や近赤外光が多く使われてきたと考えられます。
ただし、今回のレビューでは、青色光や緑色光を使った研究でも生物学的な反応が報告されています。
特定の色だけに働きが限られているわけではなく、光の種類によって異なる可能性があることも、研究の興味深い点です。
LEDとレーザーに共通する、光が細胞に働きかける仕組み
では、LEDとレーザーは光の性質が違うのに、なぜ似た生物学的な反応が見られたのでしょうか。
論文では、光が細胞内の物質に吸収されることで、さまざまな反応につながる可能性が説明されています。
私たちの細胞には、活動に必要なエネルギーをつくる「ミトコンドリア」という小さな構造があります。
過去の研究では、赤色光や近赤外光が、ミトコンドリアにある「シトクロムcオキシダーゼ」という物質に吸収される可能性が報告されています。
この物質は、細胞がエネルギーをつくる過程に関わっています。
光が吸収されることで細胞内の反応が変わり、その影響が細胞の増殖やコラーゲンをつくる働きなどにつながる可能性が考えられています。
また、光を受けた直後に起こる反応だけでなく、その後数時間から数日かけて起こる反応についても、論文では紹介されています。
このような仕組みを考えると、細胞が光に反応するうえでは、レーザー特有の性質だけでなく、細胞がどの種類の光を吸収するかも重要なポイントになりそうです。
ただし、この仕組みは今回の68研究をまとめたレビューで一連の流れを直接確認したものではありません。論文内で紹介されている過去研究などをもとにした説明です。
傷のケアへの応用を考えるうえで、今後の課題も
今回のレビューでは、LEDとレーザーの両方で、傷の修復に関わる細胞や組織の変化が報告されていました。
LEDの活用を考えるうえで興味深い結果ですが、実際の傷の治療につなげるためには、さらに確認が必要な点もあります。
人の傷では、どのくらい変化するのか
今回の68件は、細胞や動物を使った研究です。
傷の修復に関わる細胞が増えることや、新しい血管が形成されることは、傷の修復を考えるうえで重要な変化です。
一方、人の傷が実際に何日早く治るのか、どのくらい傷の大きさが変わるのかについては、今回のレビューでは統一した数字が示されていません。
著者たちも、特にLEDについて、人を対象とした研究をさらに進める必要があると述べています。
光の種類や量をそろえた比較が求められる
もう一つの課題が、研究条件の違いです。
今回紹介したように、LEDとレーザーの比較研究でも、光の波長や与えた量は必ずしも同じではありません。
また、68件の研究について、光を当てる時間や頻度、研究期間をすべて同じ形式で比較できる情報は、レビューにはまとめられていません。
そのため、LEDとレーザーをより正確に比較するには、光の種類や量などをそろえた研究が重要になります。
安全性や家庭用LEDへの応用について
今回のレビューは、主に傷の修復に関わる生物学的な変化を分析したものです。
好ましくない変化が起きた人の割合や、長期間使用した場合の安全性をまとめたものではありません。
また、家庭用のLED機器を使用して同じ変化が起きるかどうかも調べられていません。
家庭用機器では、研究で使われた装置と光の強さや使用時間などが異なるため、同じ結果になるかは別途確認が必要です。
まとめ|赤色LEDにもレーザーと共通する働きが見えてきた
今回のレビューでは、68件の細胞・動物研究を分析し、LEDとレーザーが傷の修復に関わる細胞や組織にどのような影響を与えるのかを比較しました。
その結果、両方の光で、コラーゲンをつくる細胞の増加や新しい血管の形成など、傷の修復に関係する似た反応が報告されていました。
特に注目したいのは、LEDとレーザーを直接比較した6件の研究でも、共通する生物学的な反応が報告されていたことです。
また、LED研究では627〜670nmの赤色光が多く使われており、光の種類だけでなく、与える量によっても細胞の反応が変わる可能性が示されていました。
この研究からわかるのは、レーザー特有の光の性質がなくても、LEDによって傷の修復に関わる反応が起こり得るということです。
人の傷に対する具体的な効果や最適な使用条件については、今後の研究が必要です。
それでも、赤色LEDがレーザーと共通する働きを持つ可能性を示した今回のレビューは、LEDを傷の修復に活用する研究の意義を理解するうえで、重要な手がかりとなるものです。
参考文献
Effects of low-power light therapy on wound healing: LASER x LED
Chaves MEA, Araújo AR, Piancastelli ACC, Pinotti M.
2014年
Anais Brasileiros de Dermatologia, 89(4), 616–623.
DOI:10.1590/abd1806-4841.20142519